キャトル・リーフは、病院や特別支援学校・高齢者福祉施設などでミュージカルを上演しているNPO法人です。

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    筑波大学のHPにも私たちの活動が紹介されました。


    http://www.tsukuba.ac.jp/topics/20080925132412.html

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      薬剤師・薬学部の学生向けの季刊誌「MIL」に掲載されました。

      バックナンバーはこちら


      http://www.anycr.com/mil_archives/backnumber.html

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        Yahoo!Japan のボランティアカテゴリ「プチボラしよう!」に活動が取り上げられました。

        紹介記事はこちらです


        http://volunteer.yahoo.co.jp/petit/20070405.html

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           私のミュージカルとの出会いは、中学時代の音楽の授業。
          ビデオで観た「サウンドオブミュージック」でした。
          こんなものがあるんだ!と目を見張りました。
          続いて東京青山劇場の「アニー」。
          家族を無理やり引っ張って当日券に早朝から並んでやっと観ることができました。
          生のミュージカルを観たのはこれが初めてで、歌、ダンス、お芝居、なんとも贅沢な舞台に感動しました。




           東京女子医科大学医学部に入学してからもミュージカルの熱は冷めることのなかった私が偶然雑誌で目にしたのが、
          お茶の水女子大学ミュージカルサークル公演の宣伝でした。
          ミュージカルはプロがやるものとばかり思っていた私はアマチュアとは思えないすばらしい舞台に興奮し、早速サークルのメンバーに加えてもらいました。
          そして5年生の冬、ついに母校でのミュージカル公演が実現しました。
          クラブ活動の発表という形で病院にもポスターをはらせていただいたところ、
          一般のお客様にまじって付属病院からたくさんの患者さんが観に来てくださいました。




           そのとき手渡されたアンケートにタイトルに記した一文が書いてあったのです。
          片手で点滴を引きながらアンケートを渡してくださった患者さんの、
          にこやかな笑顔を今でも忘れることができません。
          私たちの公演で元気になってくださった方がいる。
          大好きなミュージカルを公演できた喜びとは別の大きな、新鮮な感動がそこにはありました。




           そして国立東京医療センターで医師としての第一歩を踏み出した辞令交付の日。
          辞令交付の行われた立派な講堂で思わずスポットの数を数えている自分がいました。
          病棟とつながっているこの講堂でいつか患者さんのためにミュージカルができたら、
          と夢のようなことを考えていました。
          しかしその日から、医師生活のなかで最も忙しく、
          そして一番大切だと言われている研修医の2年間が始まるのですから、
          ミュージカルの上演なんてあくまでも夢の話、と自分を戒めました。




           研修医の生活が始まり、研修に励む毎日が過ぎていきました。
          医師になるのは幼い頃からの夢でした。
          しかし現実は厳しく、患者さんのために何かしたい!と思っても、医師として何かを
          するにはあまりにも自分は未熟です。
          それならもっと患者さんとお話をしようと思っても、その時間が取れないこともあり、
          ジレンマに歯がゆい思いをする日々が続きました。
          今まで心の支えとなっていたミュージカルの活動もなく、
          余裕のなくなった私を元気づけてくれたのは、唯一患者さんの「笑顔」だけでした。
          その笑顔に会うために、何か患者さんにできることはないか、患者さんを元気にするために
          何ができるだろうできるだろうか、と毎日考えていました。




           そんなある日ふと思い出したのが、女子医大のミュージカル公演での患者さんの笑顔でした。
          あの笑顔にもう一度出会いたい!患者さんのためのミュージカルがやりたい!
          一度そう思うと気持ちはどんどん高まっていき、研修が始まって半年がたった10月、
          恐る恐る副医院長先生に企画を打ち明けました。
          本音を言えば、医師としてまだまだ研修中の身である研修医がこんなことを言ってもいいものか、
          と非常に不安でしたが、副医院長先生からは思いがけずOKのお返事をいただきました。




           早速、学生時代のサークルの仲間に声をかけ、病院内でもメンバーを募りました。
          とはいっても、仕事の合間の練習では、決まった時間にメンバー全員が集まることは不可能で、
          学生時代と勝手の違う進行状況に戸惑った時期もありました。
          しかし、義務でもないこの企画への参加を快く引き受け、
          忙しい合間をぬって練習をする医療センターのスタッフや、
          自分の仕事を終えてからわざわざ病院に立ち寄ってくれるサークルの仲間の姿は
          「みんなで一つのものをつくり上げる」という、かけがえのないものを久々に思い出させてくれました。




           そして3月。
          国立東京医療センターでのミュージカルの公演の幕が上がりました。
          音楽が流れ、照明の光に照らされ、客席いっぱいの患者さんの姿が見えた瞬間、
          私は舞台の上ということも忘れ、涙がこみ上げてきました。
          公演は大成功に終わり、2日間全4回の公演を通してのべ550人以上の患者さんが来場されました。
          そこで私がずっと見たいと思っていた、たくさんのあの「笑顔」に出会うことができたのです。
          「素敵なものをありがとうございました。またやってください。」と握手をしてくださる患者さん
          の笑顔と拍手から、私もたくさんの元気をもらったことは言うまでもありません。
          自分がどれだけこの「笑顔」を必要としていたのか、つくづく思い知らされました。




          そのときいただいた患者さんのアンケートにこんな内容のものがありました。



           『実際に劇場に行けない入院患者にとって、今回のような生の演技を観ながら胸を熱くし、
          涙を流し、そして心の底から笑うことができたなら、一時的に癒されるだけでなく
          病気を治す「内なる力」がわいてくるのを感じることができるのではないでしょうか?
          感動すると活力がわきます。スタッフ、キャストの皆さんの思いやこれまでの苦労を思うと
          それだけで感動します。医療センターとしては初めての試みということですが、
          この公演を布石にして理解を広め続けていってほしいと思います。この企画がすこしずつ
          他の病院にも広まることを願います。』



           嬉しくて嬉しくて、何度読み返しても文字が涙でかすんでしまいました。




           この東京医療センターの公演をきっかけに、今後もミュージカルの活動を続けていくことを決心しました。
          新しい出発に向けて、団体名は「キャトルリーフ」と命名しました。
          ちょっと気恥ずかしくはありましたが、四つ葉のクローバーに「幸せ」の意味を込め、
          少しでも患者さんの幸せのお手伝いができるようにと願いを込めました。




           去る10月、「キャトルリーフ」として初めての公演を聖路加国際病院で行いました。
          聖路加国際病院名誉理事長の日野原重明先生からも、お褒めの言葉をいただきました。
          そしてまた、患者さんたちの笑顔に出会うことができました。
          これからの「キャトルリーフ」の活動としては、今年1月に養護学校、3月には東京医療センター
          で再度公演を行う予定になっています。
          一研修医の突拍子もない意見が、このように次々と結実するなんてまるで夢のようです。
          もちろん、おの活動の背景には同期や上司の多大な協力があることは忘れてはいません。
          稽古や本番のために週末に病院にいる時間が少なくなってしまうため、
          一時は活動をやめるべきか、真剣に悩みました。
          医師として一人前でもない研修医がこんな活動を続けていてもいいものか……。
          正直なところ今でも悩んでいます。




           週末の午後、他の先生方よりも先に病院をあとにするとき、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
          研修期間なのだからミュージカルのお稽古をしている時間に勉強をしなくてはという焦りもあります。
          でも、入院中にミュージカルを観てくださった患者さんに外来でお会いして
          「先生、次はいつなの?あれ良かったよ。またやってよ」
          という言葉をいただいたとき、そして、公演後、患者さんからのもったいないような
          感謝の言葉が綴られたアンケートを読んだとき、私にはミュージカルを辞めることはできない、
          と感じました。




           私の活動を理解してくださって、週末に練習に行かせてくれる周りの皆さんには本当に感謝しています。
          「頑張って」という上級医の言葉にはいつも涙が出る思いです。
          そして本番間近の練習中にも、呼び出しがあれば病院にとんでいく私を「ファイト!」
          と笑顔で送り出してくれる「キャトルリーフ」の仲間にも感謝です。




          自分がたくさんの人に支えられていることをいつも感じます。
          私たちはミュージカルを観て喜んでくださる方が入る限り、この活動を続けていきたいと思います。


          JAMIC JOURNAL 2002.1 p56-57